コスプレイベントで知り合った高校2年生の卓巳と人妻の里美は、『むらまさ』と『あんず』というアニメキャラになりきって不倫の肉体関係を結んでいます。
卓巳の母である寿美子は助産師であり、命について扱っています。
里美は夫である慶一郎との間に子供ができず、不妊治療をしていました。
孫を熱望する姑であるマチコによるいじめを受け、卓巳に夢中になっていくが、それが慶一郎に寝室を隠し撮りされ、ネット上に流出してしまいます。
そして、それを見た卓巳の同級生である純子が日々の憂さ晴らしのために学校にばらまき、卓巳の友人である良太も、団地住まいで、一人で認知症の祖母の介護をしながらコンビニバイトをしており、バラ撒きに手伝ってしまいます。
ふがいない僕は空を見たの原作と脚本
窪美澄による日本の小説が原作です。
第8回R-18文学賞を受賞し、第24回山本周五郎賞も受賞しています。
監督はタナダユキで、脚本は向井康介です。
キャスト
岡本里美:田畑智子
福田良太:窪田正孝
あくつ純子:小篠恵奈
松永七菜:田中美晴
岡本慶一郎:山中崇
岡本マチコ:銀粉蝶
斉藤寿美子:原田美枝子
邦画であるふがいない僕は空の見どころとネタバレ
時間軸を複雑に駆使してストーリーを面白くしているところが魅力ですね。
いきなりセックスシーンが始まれば、アメリカならばシリアルキラーに殺されて終わりですが、官能小説を元にした邦画らしく、
「何故、セックスをしているのか?」
「その裏には何があるのか?」
ということを、時間軸をずらして表現しています。
登場人物が多いのは特徴ですね。
ただ、全員が脇役で、全員が主役とも言える微妙なバランスのさじ加減がこの映画の素晴らしいところです。
「全員が主人公」
というオニバス方式でもなく、主観によって主人公を決められる邦画となっています。
斉藤卓巳の面から見ると、好きな人はいるけれどセックスが気持ちよくて訳わからんコスプレをしてセックスしてその映像をばらまかれて不登校になるという物語となっています。
岡本里美から見ると、夫の少ない精子の性で不妊となり、姑からいじめられ、はけ口として理想としたアニメキャラクターに似た高校生とセックスしまくり、最終的にはアメリカで不妊手術を受けて、紆余曲折ありながらも家族というものを守るという物語になっています。
福田良太から見ると、団地の子供ということで、劣等感を持ちながらコンビニバイトをして、セックスをしまくって人生を謳歌している斉藤卓巳という友人を歪んだ感情で憎んで、最後に憂さ晴らしをして、尊敬するコンビニバイトの先輩が男児に性的行為をしようとしたという事件が起きて、人生に絶望するという暗い話になっています。
「余計なもん背負って生まれてきたな」
そう生まれてきた子供に言った、斉藤卓巳の言葉を非常に上手く表現しています。
まとめ
エロスと物語で勝負する昔ながらの邦画が好きな人は是非、観てみるべき邦画です。
ふがいない僕は空を見たには、アクションもグロもCGもありません。
その名の通り、空を見るだけしかない物語です。
だけど、そこに素晴らしさがあります。
それをしっかりと感じられる人は観ておいて損はないでしょう。
邦画を作ろうと言う人は、
「これだけは表現が全部クソだから観ておけ」
という作品は幾つか知っていると思います。
ただ、ふがいない僕は空を見たはその逆ですね。
低予算で最大限の効果を出せる邦画の世界の素晴らしさを全部体感することができます。
邦画を作ろうとする人は観てみなければ作品です。
表現、ストーリー、組み立て方、全てをクリアしています。